2019年4月の労働基準法改正により、年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対して、年5日の有給休暇を確実に取得させることが企業に義務づけられました。しかし「従業員がなかなか有給を取ってくれない」「取得管理が煩雑で困っている」という声は、中小企業の経営者や総務担当者の方から今なお多く聞かれます。
そこで注目されているのが、年次有給休暇の計画的付与制度(計画年休)です。この記事では、計画年休の仕組み・3つの付与方式の違い・導入手順・労使協定の作成ポイントまで、実務で必要な情報をまとめて解説します。
📌 この記事の結論
- ✅ 計画年休の対象は、付与日数のうち5日を超える部分のみ(5日は従業員が自由に使える分として残す必要がある)
- ✅ 導入には労使協定の締結が必須(届出は不要だが書面での締結が必要)
- ✅ 就業規則への記載も必要であり、変更届の提出を忘れないこと
- ✅ 付与方式は一斉付与・グループ別交替制付与・個人別付与の3つから、業務の実態に合った方式を選ぶ
- ✅ 入社間もない従業員や有給残日数が足りない従業員への配慮措置が必要
計画的付与制度の概要と法的根拠
計画年休とは何か
計画的付与制度とは、労使協定を締結することで、年次有給休暇の付与日をあらかじめ指定できる制度です。通常、有給休暇は従業員が希望する日に取得するのが原則ですが、この制度を使えば会社側が取得日を計画的に決められます。
計画年休は、年5日の取得義務化への対応策として有効です。あらかじめ有給取得日を決めておくため、取得漏れを防ぎやすく、管理の負担も軽減できます。
法的根拠:労働基準法第39条第6項
計画年休の根拠は労働基準法第39条第6項にあります。条文の要点は次のとおりです。
<ポイント>
- 使用者は、労使協定により、有給休暇を与える時季に関する定めをした場合は、その定めに従って有給休暇を与えることができる
- ただし、各従業員の有給休暇日数のうち5日を超える部分に限る
つまり、有給が年10日ある従業員の場合は最大5日分、年20日ある従業員の場合は最大15日分を計画年休に充てることができます。最低5日は従業員が自由に使える日数として残す必要がある点を押さえておいてください。
「年5日取得義務」との関係
2019年4月施行の改正労働基準法では、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対し、使用者が年5日を時季を指定して取得させる義務が課されています(労働基準法第39条第7項)。
計画年休で取得した日数は、この年5日の取得義務にカウントされます。たとえば、計画年休で3日を消化すれば、使用者が時季指定する義務は残り2日分で済みます。計画年休で5日以上を設定すれば、個別の時季指定が不要になるため、管理業務が大幅に楽になります。
3つの付与方式の違いと選び方
計画年休の付与方式は大きく3つあります。事業所の規模・業務の特性に合った方式を選ぶことが重要です。
① 一斉付与方式
全従業員が同じ日に一斉に有給休暇を取得する方式です。製造業の工場ラインのように、全員が休んでも業務に支障が出にくい事業所に適しています。
メリット
- 管理が最もシンプル
- 飛び石連休を埋めて大型連休をつくれる
- 取得漏れが起きにくい
デメリット
- 顧客対応や電話受付が停止する
- 有給残日数が足りない従業員への対応が必要
たとえば、ゴールデンウィークの飛び石の平日や、お盆の前後、年末年始の前後に設定するケースが多く見られます。
② グループ別交替制付与方式
部署やチームごとに交替で有給休暇を取得する方式です。年間を通じて営業を止められないサービス業・小売業などに向いています。
メリット
- 事業を止めずに計画年休を運用できる
- グループ単位なので管理が比較的しやすい
デメリット
- グループ間の公平性を確保する配慮が必要
- 少人数の部署では運用が難しい場合がある
たとえば、「AチームはGW前半、BチームはGW後半」というように、グループごとに異なる日を計画年休にするイメージです。
③ 個人別付与方式
従業員ごとに取得日を個別に決める方式です。誕生日や記念日を計画年休にするなど、柔軟な運用が可能です。
メリット
- 従業員の希望を反映しやすく満足度が高い
- 業種・職種を問わず導入しやすい
デメリット
- 個別に日程を調整・管理する手間がかかる
- 繁忙期に集中しないよう調整が必要
方式選びの判断基準
- 全社一斉に休業できる → 一斉付与方式
- 部門ごとに交替で休める → グループ別交替制付与方式
- 個人の事情に合わせたい・少人数 → 個人別付与方式
- 組み合わせも

監修:下村 圭祐(しもむら けいすけ)
社会保険労務士法人シモムラパートナーズ 代表
中小企業の労務管理を中心に、就業規則の作成・変更、社会保険手続き、助成金申請など幅広くサポート。複雑な変形労働時間制の導入支援実績も多数。「わかりやすく、実務で使える」アドバイスを心がけています。
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